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鍼してるところ |
【なぜ鍼灸がきくの?】
鍼灸が初めての方にとっては、なぜ鍼灸がきくのか疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。今日は鍼灸がきく仕組みを東洋的な見方と西洋的な見方でご説明をしていこうと思います。
【東洋的な見方】
東洋的な見方では、人間の体を含め、あらゆるものは気でできていると考えます。疲れがたまったり、生命力が低下すると人間の体の奥には“冷え”が生じ、様々な症状が出てきます。「病気」と言われる症状はもちろんですが、病名がつかない「未病」の状態でも、体の芯の「冷え」はその方、その方によっていろんな症状で「ケアしてね」というサインを送ってきます。
足は冷えているのに、上半身はのぼせていたり、肩や腰の筋肉が張ってしまったり、その症状の出方は人によって様々ですが、このような状態を気の流れが滞っていたり、偏っている状態と言います。鍼はそうした気の流れをよくするもの、お灸は熱を加えて気の流れを整えるものといえます。
鍼はチューナーのようなもの、と言えばいいでしょうか。人間の体も自然です。自然とはいつも変化していくもの、流れていくもの。人体にあてはめて言えば、その流れていくエネルギーが気であり、熱であるということができるでしょう。体の芯に「冷え」が生じると、その熱がある個所で滞ったり、偏ったりと、うまく動かしていくことができなくなります。その体にまだ十分な熱(エネルギー)がある場合、鍼をあてていくことによって、うまくその熱がまわっていくようになります。
お灸は、体の芯の冷えがより強い場合、体にまわしていく十分な熱がない場合に外から熱を加えていくことで、その場所の滞りを直接取り去るときに用います。冷えの固まりを外からの熱で溶かしていくイメージをしていただければわかりやすいと思います。特にエネルギーが低下しているときに、熱を加える治療はその場所の滞りを取るだけではなく、体の芯の「冷え」自体を温めることにもなります。どちらにしても、鍼もお灸も体の芯の「冷え」を取る治療なのです。
【西洋的な見方】
それでは、西洋的な見方で鍼とお灸の効果を見ていきましょう。皮膚組織に鍼をしたり、お灸をすることによって、その部位に微細な損傷を起こします。損傷を受けた部位は血流が増え、軽度の炎症状態となり、組織を修復しようとする働きが活発化し、リンパ球や白血球が増加します。血流も増加し、古い組織に溜まっていた疲労物質などが運ばれます。これが免疫の活性化、血液の流れが改善する効果です。
また、鍼やお灸をすることによって、その皮膚への刺激が伝導路を通して脳に伝わり、脳内に内在する鎮痛物質エンドルフィンや副腎皮質ホルモンのコルチゾール(炎症を抑えて痛みを止める働き)の分泌が生じます。これによって痛みを抑えることができます。
免疫の活性化、血流の改善、痛みの抑制の他にも、自律神経の調整をすることもできます。基本的にソフトな刺激は副交感神経を刺激し、強い刺激は交感神経を刺激すると言われています。ストレスが多かったり、緊張すると交感神経が興奮しがちです。いつでも戦えるように、もしくはいつでも逃げれるようにするのが交感神経の役割、ここぞと頑張るときに大事なのが交感神経です。もちろん時にはバリバリ仕事をしたり、いざというときに命を守るためにこの交感神経はとても大事なのですが、これだけでは体が疲れてしまいます。お仕事が忙しかったり、頑張りすぎてるな、というときは、鍼やお灸のふわっとした刺激で体がゆるむと副交感神経が働いてきます。副交感神経はゆったりするときに働く神経。つっぱっていた筋肉がゆるんだり、お腹の動きもよくなります。交感神経と副交感神経、しゃっきりさんとゆったりさん、鍼灸によってこの二つのバランスをうまくとることができます。
また体性内臓反射というものがあります。皮膚に鍼やお灸の刺激をすることによって、その刺激が脳にいき、感覚神経が自律神経系を通して、末梢器官(消化管、泌尿器、循環器、内分泌など)に作用することが知られています。便秘が治ったり、胃潰瘍がよくなったりといった内臓疾患、生理痛の改善など婦人科疾患にも鍼灸の効果があるとされているのは、この反射があるためといわれています。内臓は自律神経によって支配されているので、鍼灸で自律神経のバランスをよくすると、自然と体は治る方向に向かっていくのです。
【鍼灸で「冷え」をとりましょう】
以上のように東洋的な見方、西洋的な見方で鍼灸のきく仕組みをお話してきました。鍼灸で気を動かし「冷え」を取ること、これが東洋的な説明です。皮膚組織への鍼灸の刺激により刺激が脳に伝わり、痛みを抑制する物質を出したり、自律神経系に働きかけること、血流が改善すること、これらが西洋的な説明です。鍼灸でみなさんの体と心がゆったりほっかほかとなるお手伝いができますように。
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Clunyで見た虹 スコットランドは雨が多いので虹によく出会えます。 |
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